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ドクターさわやまの「当世健康講座」:亭主を早死にさせる10か条

第1条 亭主曰く"朝高い"、妻答えて曰く「医者では低い ほっときな!

これは血圧値に関する話題ですね。亭主が朝起きて血圧を測ると170と90と出ました。でも奥さんは夫が昨日の11時30分ころ病院で計った血圧値は126と76だったことを記憶しているので、朝高くても気にしない気にしない、病院で正常だったから放っておきな!と突っぱねています。

さて、この川柳のどこに亭主を早死にさせる殺し文句が潜んでいるのでしょうか?

実は奥さんの方が一枚も二枚も上手なんです。

以前は血圧といえば病院で計るものでした。外来血圧、随時血圧、白衣高血圧などという言葉がありますね。

一方、この亭主、心電図で左室肥大の所見があり、腎機能も低く、尿に蛋白も出ているのです。最近高血圧患者のうちで、病院では血圧が正常範囲に保たれているけれど、家庭で早朝に計ってもそうであるとは限らないという方々が多数いることがわかってきました。図1を見てみましょう。

続いて図2を見てみましょう。

図1から仮面を脱いでもらいました。お分かりでしょうか?病院血圧は正常範囲でしたが、何とこの夫、自宅で早朝に血圧を測定してみると175/85ではありませんか!

この状態は従来から「早朝高血圧」と言われてきましたが、最近は「仮面高血圧masked hypertension 」と呼ぶようになっています。一般には病院で血圧を測定すると自宅よりも高く出ることが多いと解釈され、これは白衣高血圧という名称で有名ですが、この状態はまさに「逆白衣高血圧」です。この現象は家庭で早朝に血圧を測定しないと見つからない高血圧と言う意味で仮面をかぶった高血圧というわけです。

早朝に向けて徐々に高まってゆく血圧、そのピークの時点で脳梗塞や心筋梗塞が発症しやすいのです。早朝と言えば、後で詳しく解説する予定ですが、日の出とともに交感神経の活性が高まり、そのために血圧が上昇しやすい以外に、心拍数が増加し、動脈は収縮しやすく、血液の粘度は高まり、さらさら度は低まるのです。

なお、早朝高血圧、仮面高血圧は、朝の出勤と関連してストレスを受けやすく、早朝に喫煙をする人々に多いようです。

さて、これらの事柄について知識を重ねている主婦は、夫を早死にさせたいがために"あくまでも病院で測定する血圧が正常範囲だから安心だよ"とたぶらかしているのです。くわばらくわばら、とくとご注意あれー。

さあ皆さん、次回は第2条"夜高い"「風呂に入りな 低くなるよ」を予定しています。

第2条も血圧関係ですが、どこに落とし穴があるのでしょう、二度とだまされないよう予習をしておいてください。