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JMPマガジン174

先進医療NAVIGATOR 日本と海外のがん治療

【対象】がん治療に関心をもつ医療関係者(医師、医薬品・医療機器関係者、医療保険関係者など)

【内容】

日本では、がん(悪性腫瘍)による死亡が全死亡のおよそ1/4を占め、死因の1位となっており、なお増加していることが報告されている。

がんの診断、治療は日進月歩であるが、わが国のがん治療を海外との比較という視点から見つめなおし、特徴(長所、先進性など)、未来に向けた課題を検証する1冊とした。

【目次】 

総論

1 疫学(松田智大)
2 ゲノム医療(織田克利)

各論

1 頭頸部がん(吉本世一)
2 甲状腺がん(原 尚人)
3 肺がん
1)外科治療(多根健太・坪井正博)
2) 非外科治療(後藤悌)
4 乳がん
1)外科治療(上野貴之)
2)非外科治療(齋藤亜由美・米盛 勧)
5 食道がん
1)外科治療(大幸宏幸・小熊潤也・石山廣志朗・栗田大資・宇都宮大地・秋本瑛吾・伊賀上翔太・野崎良子・角田龍太・瀬戸泰之)
2)非外科治療(佐野桃子・今関 洋・加藤 健)
6 胃がん
1)外科治療(大野優紀・寺島雅典)
2)非外科治療(桶本 大・中山厳馬・設楽紘平)
7 大腸がん
1)外科治療(川合一茂)
2) 非外科治療(室  圭)
8 肝細胞がん
1)外科治療(齋浦明夫)
2) 非外科治療(長沼 篤・奥坂拓志)
9 膵がん
1)外科治療(眞鍋高宏・吉岡伊作・渋谷和人・藤井 努)
2)非外科治療(肱岡 範・森実千種・奥坂拓志)
10 子宮がん(宮本雄一郎)
11 卵巣がん(石川光也)
12前立腺がん(松井喜之・藤元博行)
13膀胱がん(清水史孝・堀江重郎)

執筆者一覧

[企画]

[執筆者]

巻頭言

今回、「日本と海外のがん治療」について特集を企画させていただいた。わが国は、二人に一人はがんに惟患する時代である。また死因トップもがん(悪性新生物)であり、亡くなる方の四人に一人はがんで命を落としている。社会構造的にも未曽有の高齢化が進んでいるが、がんの領域も同様であり、現在がん患者さんの45%は75歳以上と考えられている。がん患者数は向こう10年間増え続け、かつその時には6割以上が75歳以上の後期高齢者になると推測されている。これからがん医療を考える際には、高齢化を念頭におくことの重要性がさらに増していくことは明らかである。

一方、医学の進歩に伴いがん治療が大きく変貌していることも間違いない。筆者が医学部を卒業したときには、ゲノム医療は臨床現場にはまったく取り入れられていなかったし、ロボット手術など想像(創造)もされていなかった。薬物療法も有効なものは少なく、根治的がん治療は手術と放射線が主体であった。この聞の薬物療法の発展は、免疫チェックポイント阻害剤の導入はじめ目を見張るものがある。

さて、それではわが国のがん治療は諸外国と比較してどうなのであろうか、という問いが生まれ、今回の企画となった。海外の治療状況を知って、はじめてわが国のいいところ、不得手なところ、すなわち課題がより明らかになるだろうと考えた次第である。高齢者に対する治療を考える上でも有用であろう。総論では疫学、ゲノム医療を取り上げ、各論では臓器別に基本的に外科治療、非外科治療に分けて執筆いただいた。なかなか執筆しにくいテーマであったと思うが、快くお引き受けいただいた先生方には誌面を借りて、感謝と敬意を表します。

また、このような企画を採用していただいた、日本医学出版の渡部新太郎氏にも心よりお札を申し上げます。本企画が読者の皆様の参考になれば、小生望外の喜びです。ぜひご一読ください。

令和7年5月吉日
国立がん研究センター中央病院
瀬戸 泰之