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五感診療の達人をめざして

五感診療の達人をめざして

問診・視診・触診・聴診の4つの【五感作法】は実地医家や臨床研修医に身につけて欲しい必須の技である。

本書は五感作法(アナログ手法)を駆使し、デジタル手法を十二分に活用できるよう導く医療書である。

CDによる心音シャワー・聴診の達人」(弊社好評刊)の著者による新刊!!


はじめに

 現代は,手当たり次第デジタル社会である。デジタルはその技術に格段の進歩が見られるが,その進歩は常に加速しない限り生き延びられないのではないだろうか。携帯電話にパソコンそれに家電製品は言わずもがな,クルマもご他聞に漏れず,それらは生き延びるためにモデルチェンジを重ねることになり,いきおい資金が優先することになる。このことは医療面にも通じるようである。でも「デジタル機器がないと医療ができない」とは言わないようにしたいものである。しかもデジタル医療は,まずは往診先,あとは停電下,火災現場,地震現場などでは,その活用は不可能であろう。


 一方私ども医療者が接するヒトは元来アナログ的生物である。アナログそのものは,時代を経ても永遠に不変でしかも廉価だから,誰にでもどこででもいつでも利用できる。アナログは医療においてもしかりで,目,手,耳などの五感を鍛錬すれば可能となる。ときには「第六感」が物を言う!
 本書は、五感作法(アナログ手法)を十分生かすことによって,デジタル手法を的確に十二分に活用できるよう仕向けるための医療書である。またもしアナログを軽視しデジタル中心で診療すれば,どのような弊害が,見逃しが,誤認が生じるかについて,循環器疾患領域を中心に実例を提示しながら進めてゆこう。


 なお以下の考え方は,2010年4月2日に放映されたTV番組「パッチアダムス(米国医師)」から学んだ事柄である。『デジタル医療と言えば「電子カルテ」もしかりである。パソコンを操りながらの面接では患者と向き合う時間が少ないので,患者は異口同音に「顔を見て話してもらえない」と嘆き,その結果,医療不信にも陥りかねない。しかも患者との短時間の向き合いでは,医療者には疾患以外のことは何も分からないであろう。医療の本質は「ひとを大事にすること」で,疾患はその一部でしかないことを肝に銘じるべきである。』


 ところで,私が最初に世に出した出版物『心機図による心臓病診断の技術』は1970年代に発刊されており,私は50年以上にわたって医療に携わっているが,とりわけ五感診療の作法に関する限り,その頃と顕著に変化しているような内容は少ない。


 第1編では,受診者を対象にして,問診をはじめ視診・触診・聴診がどのように診療に役立ったかについて,ケーススタディから学ぶことにする。


 第2編では,心臓血管系の診察に際して視診・触診・聴診の順序で図や写真と照合しながら活用できるよう考慮してある。加えて,どのようにすれば五感診療をうまく学習できるのかについても考えてみたい。


 なお,ここでいう「五感診療」で得られた,とりわけ視診・触診・聴診所見は,あくまでも主観的個人的な表現形である。したがってそれらは,主幹のみにとどめることなく波形化,図形化して客観性を持たせる必要がある。ここで初めてデジタル手法の出番となる。それらはCDあるいはDVD等の「デジタル」教材,ならびにそれらの図形化としての脈派図・心音図・心機図記録で,それらを活用することによって所見が確認されることにもなる。これらのメディアに関しては,私の出版目録を末尾に付記しておくので参照いただければ幸いである。


2011年1月吉日
沢山 俊民


目次

第1編

受診者を対象に、問診をはじめ視診・触診・聴診がどのように診療に役立ったかについて ―ケーススタディから学ぶ

第1章 聞き(問診)上手な医師になろう

型どおりの問診を行うことによって、本人が好まないデジタル医療から解放された(セカンドオピニオン)

第2章 診察(視診・触診・聴診)上手な医師になろう

診察(触診)が順序よく行われておれば、避けられたであろう誤投薬例/診察(触診)が順序よく行われておれば、避けられたであろう弁置換手術の提案/診察(触診)が型どおり行われておれば、気づかれたであろう先天性心奇形例/診察(触診)が型どおり行われておれば、気づかれたであろう下肢動脈血栓塞栓例/診察(聴診)が型どおり行われておれば、施行されなかったハイリスクの処置

第2編

心臓血管系の診察に際して視診・触診・聴診について ―図・写真と照合しながら

第1章 五感診療1

心血管拍動は体外に伝達され、五感でキャッチされる/心血管拍動は診察作法でどのように把握できるのか:聴診のみではデメリットが/「視診」によって低周波数の心血管拍動を捉えよう/「触診」によって中周波数の心血管拍動を捉えよう

第2章 五感診療2

「聴診」によって高周波数の心血管拍動を捉えよう/心臓部位を聴診してわかること:心音と心雑音

第3章 五感診療3

「聴診」によって高周波数の心血管拍動を捉えよう/心雑音を聴診してわかること:心雑音の聞き方と種類(各論)

第4章 五感診療4

「聴診」によって高周波数の心血管拍動を捉えよう/心雑音を聴診してわかること:主な心疾患の聴診所見(各論)