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第一線の介護職員が みた、ふれた、感じた スウェーデン高齢者ヘルスケア事情

第一線の介護職員が みた、ふれた、感じた スウェーデン高齢者ヘルスケア事情

第一線の看護福祉士、PT、OT、施設管理者などの介護職員がスウェーデン高齢者ヘルスケアを見学。それぞれの立場でみたまま、感じたままをまとめた。

一級建築士が訪問施設を専門の立場からコメントを加えた。

巻頭に参加者の座談会を設けて、みて、ふれて、感じたままの感想をディスカッション。

医療・介護スタッフの自己啓発・研鑽に必読の書。

スウェーデンヘルスケア社とは

1989年設立。年間薬800名の研修生を受け入れ、日本からは90年より、はじめは大使館関係であったが現在は医師、看護師、学生、企業などが参加。

日本以外にも東ヨーロッパ、中近東などから参加。

医療、福祉を紹介する 民営であるが政府より補助金が出ている。

スウェーデンという国とは


序文


 行ったからこそわかった事実がきっとある。インターネットで多くの情報が簡単に収集できる昨今だからこそ,“自分の目線でみて,触れて”がいっそう大切ではないだろうか。


 湖山医療福祉グループは1983年の銀座病院開設以来,一貫して「自分たちが心から受けたいと思える医療・福祉サービスをつくっていこう」を常に考えて事業展開してきました。現在は全国10都道府県において16法人により,病因・医院・診療所・介護老人福祉施設・介護老人保健施設・デイサービスセンター・居宅介護支援事業所・グループホームなど様々なサービスを提供しています。そのような中で,現場で働く多くの若者たちにこそ,福祉先進国といわれる諸外国で学ぶ機会をもたせたいと考えたことが,スウェーデン視察研修実施の大きな理由でもあります。


 医療技術や介護技術で仕事を組み立てるのではなくて,文化・伝統・生活・風習といったベースを医療・介護・リハビリに生かすことのほうがお年寄りには幸せであること,そんなことも学んで欲しいと思います。


 そして,座談会メンバーの参加した第3回の視察交流研修(平成14年6月23日〜7月1日)は高齢者医療福祉にとどまらない大きな視点でスウェーデンをみつめることができるよう「成人障害者施設」や「保育園」を訪れました。参加者にとってもノーマライゼーションの本質を知る上で大きな収穫であったと思います。


 私たちの事業は,お年寄りの笑顔に支えられています。お年寄りの笑顔の数が私たちの成長への轍であると思います。今回,スウェーデンへの渡航の記録をまとめることでお客様のために,より日本らしい介護のあり方を考えるきっかけになることを願うばかりです。


平成15年12月吉日

湖山 泰成



刊行に寄せて


いかなる国の人々も高齢者ケアの大切さを忘れるべきではありません。その国のために一生懸命働いてきた高齢者は有意義な“Golden Age”を手に入れる権利があるのです。湖山泰成代表の率いる湖山グループは,日本の文化やその土地の風土を細かく考慮した施設を全国に展開され,そして何よりも素晴らしいスタッフを育成されており,高齢者が“Golden Age”を楽しめるように大変な努力をされています。


湖山氏は「他に己を学ぶ」という事をよく理解されており,スタッフの皆さんを3年間連続でスウェーデン研修に送ってくださいました。そして研修に参加された日本各地のスタッフの皆さんが,スウェーデンでたくさんのインスピレーションを得て,それぞれの現場の仕事に活かしてくださっているとうかがい,私は大変に嬉しく思っております。


 男女平等に働くスウェーデン社会を支えてきたのは,均等にケアの行き届いた高齢者や子供のための施設です。日本はこれまで介護は家族の問題という意識が高かったと思いますが,これからは少しスウェーデン・スタイルにシフトしていく必要があるでしょう。そういうスウェーデンも,今までに様々な変化を乗り越え,その度に社会福祉制度が充実していったのです。日本は施設に入れられるお年寄りを気の毒がる風潮があるときいたことがあります。しかしこれを皆さんの力で「施設にはいってもっと幸せになった」といわれるようにかえていかなくてはなりません。そして施設に入るか,自宅で暮らすか,どのようなサービスを受けるかということを,お年寄りが自由に選択できるバリエーション豊かな社会を築いていかなくてはなりません。


 高齢者人口のピークを過ぎたスウェーデンは,現在もなお切磋琢磨して理想の社会福祉のスタイルを模索しています。ライフスタイルはどんどん変化していますから,さまざまな施設もそれに合わせて考慮されなくてはならないのです。日本も女性の社会進出は益々増えていくでしょうし,若い人が少なくなると,働ける人はどんどん外に出て働かなくてはならなくなります。そうなると今の受け入れ態勢で十分でしょうか。ただでさえ出産率が減っているところに,介護への不安が重くのしかかってきたのでは,子供の数は減る一方でしょう。こういったことを考慮して,働く人が働きやすく,サポートを受ける人にはチョイスを多くという方向に引っ張っていかなくてはならないのです。


 私は湖山グループのスタッフの皆さんが,日本の高齢者福祉をよりよい方向に導いていってくれると期待しております。高齢者国家の先輩であるスウェーデンの介護現場の現状と歴史からヒントを得て,自分たちの現場をどんどんかえていってほしいと思っております。そして,日本のよい部分をもっともっと伸ばしてほしいと思うのです。昨年私は富士にある湖山グループの施設を訪問しました。畳の部屋でお年寄りが数名昼寝をしていたのですが、,1人だけ寝つけないおばあさんがいて,その方の横でスタッフが添い寝をして団扇で静かに風を送ってあげていました。その暖かい情景が今でも忘れられません。そういった日本のやさしさを大切に,スウェーデンで養った経験を活かして日本の福祉のマーケットをどんどんリードしていってほしいと願っております。


2003年3月 マルメにて

スウェーデン・ヘルスケア社
代表取締役社長
ケリー・パーソン


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