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楽しく患者をやる気にさせる糖尿病教育―体験型糖尿病教室のススメ

楽しく患者をやる気にさせる糖尿病教育

従来の医学知識を一方的に提供する講義形式から楽しくてためになる糖尿病教室への大転換ガイド。

体験型糖尿病教室の実際、実践シナリオ集、使える媒体集など、実践的な内容が盛りだくさん。

糖尿病教室の講演者、運営スタッフの必携書 。


はじめに



 本邦でも食生活・ライフスタイルの欧米化に伴い、糖尿病をはじめとする生活習慣病が急増しており、平成9年度に実施された糖尿病実態調査の結果では、糖尿病が強く疑われる人(HbA1c値6.1%以上)は全国で690万人、糖尿病の可能性を否定できない人(HbA1c値5.6〜6.0%)を合わせると1,370万人といわれています。国民医療費抑制の面からも、その対策が急務とされています。

 糖尿病は患者教育の病気といわれ、患者さんの行動変容を促す心理学的アプローチが重要なことはいうまでもありません。しかし、従来の医学知識を一方的に提供する講義形式の糖尿病教室では闘病意欲のある熱心な患者さんにはとても効果的なのですが、まだやる気の十分起きていない患者さんには効果が少ないことはよく経験します。

 また、行動変容を促そうとして「もう一度、糖尿病教室に参加して食事と運動について勉強されたらどうですか?」と声をかけても「あの話はもうききました」「結局、やるかやらないかは自分の問題なんです」「わかってはいるんですけど仕事が忙しくてね」「意志が弱くて長続きしないんです」と参加してくれそうにありません。せっかく苦労して糖尿病教室を開いたのに、聴講者が次第に減少してしまい、閉鎖せざるをえなかった医療機関や自治体も多いときいています。

 先進的に糖尿病教室を始めた病院や自治体でも、長年同じプログラムでやっていると、そのプログラム自体が時代とともに古くなってマンネリ化してきます。また、クリティカルパスを導入して、糖尿病合併症等の検査はもれなくできるようになり、系統的に糖尿病教育を行って糖尿病に関する知識テストの点数はよくなったものの、行動変容や血糖コントロール改善には必ずしもつながらなくて、どうしたものかと悩んでいる看護師さんもおられます。

 そして、マスコミやインターネットからいつでも欲しい情報が取り込める、情報化社会の現代においては、病院や保健センターにおける情報提供型の糖尿病教室の意義は以前に比べ薄れてきた感があります。また、私たち保健医療従事者の意見よりもマスコミからの情報に振り回されている患者さんも多くみかけます。筆者は学生時代に行動科学やカウンセリングを学ぶ機会に恵まれ、それを応用して病院や市町村で「楽しくてためになる糖尿病教室」を実践し、好成績を収めることができ、学会等で報告してきました。皆さんも、楽しくてためになる糖尿病教室を私たちと一緒に実践してみませんか。本書でそのノウハウをつかんで頂ければ幸いです。



2002年12月吉日
坂根 直樹




目次

第1章 つまらない講義形式から楽しくてためになる糖尿病教室へ
第2章 健康教育の歴史と行動科学
第3章 糖尿病教室の実際
第4章 糖尿病教室で役立つ媒体
第5章 糖尿病教室実践シナリオ集
第6章 糖尿病教室の評価
おわりに
参考文献